高齢者の便秘は「よくある」けれど、放置してはいけない
高齢者の便秘はとても多く、
介護の現場でも「出なくて当たり前」と思われがちです。
しかし、便秘は単なる不快症状ではありません。
・食欲低下
・腹部膨満感
・吐き気
・不穏やせん妄
・転倒リスクの増加(いきみ・夜間トイレ)
など、全身状態に影響を及ぼす重要なサインです。
だからこそ大切なのは、
「とりあえず下剤を使う」ではなく
どんな便秘なのかを見極めること です。
便秘ケアで一番大切なのは「どのタイプの便秘か」
便秘にはいくつかのタイプがあります。
高齢者で多いのは次の3つです。
・腸の動きが弱くなる「弛緩性便秘」
・便が硬くて出にくい「硬便タイプ」
・薬の影響による「薬剤性便秘」
このタイプを見誤ると、
下剤を使っても効果がなかったり、
逆に苦しさを増やしてしまうことがあります。
介護者ができる“観察”が治療の質を左右する
便秘ケアでとても重要なのが、
介護者による日常的な観察 です。
家庭や施設で見ている人だからこそ分かる情報があります。
・何日出ていないか
・便の硬さ(コロコロ/普通/泥状)
・量はどれくらいか
・排便時に痛みや苦しさはあるか
・残便感がありそうか
・お腹が張っていないか
これらは、医師が処方を考えるうえで非常に重要な材料になります。
病院では「何日出ていないか」を重視している
病院や施設では、
「3日出ていない」 というのが一つの判断基準になります。
3日排便がなければ、
・内服下剤の追加
・坐薬
・浣腸
などを検討することが多いです。
これは「3日経ったから危険」という意味ではなく、
これ以上溜めると硬くなり、出にくくなる からです。
家庭でも
「最後に出たのはいつか」
を把握しておくことは、とても大切です。
薬剤性便秘という考え方|抗がん剤・鎮痛薬・向精神薬
便秘の中でも、特に注意が必要なのが 薬剤性便秘 です。
病院では、
・抗がん剤
・オピオイド系鎮痛薬
・向精神薬
・パーキンソン病の薬
などを使用している方に対して、
予防的に便秘薬を併用 することがよくあります。
特徴は、
「腸は動いているのに、便がとにかく硬い」こと。
この場合、刺激性下剤だけを使うと
お腹は痛いのに出ない、という状態になりやすいです。
便をやわらかく保つケア|マグネシウムの役割
病院でよく使われるのが、
酸化マグネシウムなどの 浸透圧性下剤 です。
これは
・腸の中に水分を引き込む
・便自体を柔らかくする
という作用があります。
抗がん剤治療中の患者さんなどでは、
「出す薬」よりも
「固くしない薬」 を重視していました。
この考え方は、家庭ケアでもとても参考になります。
家庭でできる工夫① 硬水という選択肢
硬水が「ダイエット水」と呼ばれる理由の一つに、
マグネシウムが豊富 という点があります。
マグネシウムには、
便を柔らかくする働きがあります。
そのため、
医師から水分制限が出ていない方であれば、
家庭で 硬水を取り入れる のも一つの方法です。
ただし、
・急に大量に飲まない
・お腹がゆるくなりすぎないか観察する
ことが大切です。
家庭でできる工夫② 生活リズムと排便環境
便秘ケアは、薬だけでは不十分です。
・朝食後にトイレに座る習慣
・足台を使って踏ん張りやすくする
・トイレを寒くしすぎない
・焦らせない、声かけを工夫する
こうした環境調整だけで、
排便がスムーズになる方も多くいます。
受診・相談の目安と、医師への伝え方
次のような場合は、受診や相談をおすすめします。
・4日以上出ていない
・腹部が強く張っている
・吐き気や食欲低下がある
・下剤を使っても全く出ない
受診時は、
「◯日出ていない」「便はコロコロ」「お腹が張っている」
など、事実をそのまま伝える ことが大切です。
まとめ|便秘は「体からのサイン」。早めのケアを
高齢者の便秘ケアで大切なのは、
「出すこと」よりも
「溜めないこと」「固くしないこと」 です。
そのために必要なのが、
・便秘のタイプを見分ける
・介護者による日常的な観察
・医師と情報を共有すること
便秘は体からの大切なサイン。
気づいてあげることが、何よりのケアです。


